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日语阅读:籠釣瓶4

2006-07-11 19:29   来源:岡本綺堂       我要纠错 | 打印 | 收藏 | | |

  四

  仲の町の立花屋では、佐野のお大尽が不意に乗り込んで来たのに驚いた。亭主の長兵衛は留守であったが、女房のお藤がころげるように出て来て、すぐに二人を二階へ案内した。女中は兵庫屋へ報(しら)せに行った。

  二階には手炙火鉢(てあぶり)が運ばれた。吸物椀や硯蓋(すずりぶた)のたぐいも運び出された。冬の西日が窓に明るいので女房は屏風を立て廻してくれた。次郎左衛門のうしろの床の間には、細い軸物(じくもの)の下に水仙の一輪挿しが据えてあった。二人は女房や女中の酌で酒を飲んでいた。

  そのうちに女房はこんなことを言った。

  「八橋さんの花魁(おいらん)は、大尽がお越しになったのでさぞお喜びでござりましょう。そう申してはいかがですが、花魁もことしの暮れはちと手詰まりの御様子でしてね」

  「可哀そうに……。たんと金がいるのかね」と、次郎左衛門が訊いた。

  「さあ、どんなものでござりましょうか。わたくし共も詳しいことは存じませんが、なんでも浮橋(うきはし)さんからそんな話がござりました」

  浮橋というのは八橋の振袖新造(ふりそでしんぞう)で、治六の相方であった。

  「そうか。おい、治六。貴様どうかしてやれよ」と、次郎左衛門は笑った。

  治六はにっこりともしないで、黙って酒を飲んでいた。

  そうでなくても、主人は金を遣いたがっているところへ、花魁が手詰まりだなどという噂を聞かされては堪まったものではない。治六はもう逃げて帰りたくなった。

  女中の迎いを受けて浮橋がさきへ来た。女房と女中が階下(した)へ立ったあとで、浮橋は花魁がこの年の暮れに手詰まりの訳を話した。それも五十両ばかりあればいいのだが、さてその工面(くめん)が付かないのは情けないと言った。次郎左衛門はたったそれだけでいいのかと笑った。これは花魁へいつもの土産だといって、二百両の金包みを出した。浮橋にも十五両やった。

  「これで花魁も浮かみ上がるでおざんしょう」と、浮橋は自分も生き返ったように喜んでいた。

  「今ここへ来る途中で、栄之丞さんに丁度逢(あ)ったよ」と、次郎左衛門は杯を浮橋にさしながら言った。

  どこで逢ったと訊き返したので、雷門まえで逢ったというと、浮橋は黙って少し考えているらしかった。この頃こっちへ来るかと訊くと、浮橋はちっとも寄り付かないと答えた。八橋と喧嘩でもしたのかと訊くと、そんな訳でもないらしいとのことであった。

  いい加減な嘘をついているのだと治六は思っていた。しかしそれは客に対する新造の駈け引きでもなんでもなかった。じっさい栄之丞はこの冬の初め頃から八橋のところへ顔を見せないのであった。使いをやっても碌(ろく)に返事もよこさなかった。二、三日まえにも使いを出して、ぜひ相談したいことがあるからちょいと来てくれと言ってやったら、当時は病気で外へ出られないという返事であった。その栄之丞が雷門まえをうろうろ歩いていたというのは、浮橋にもちっと解(げ)せなかったが、今はそれを詮議している場合でもないので、彼女は寄らず障らずの廓ばなしなどをして、しばらくその席をつないでいたが、花魁の八橋は容易に茶屋へ姿を見せなかった。

  女房も八橋があまり遅いのを待ちかねて、もう一度催促をやろうかと言った。

  「いいえ、わたしが見てきいんしょう」

  浮橋は自分で兵庫屋へ引っ返して行った。番頭新造(ばんとうしんぞう)の掛橋(かけはし)に訊くと、花魁は急に癪が起ったので医者よ針よと一時は大騒ぎをしたが、やっと今落ち着いたとのことであった。浮橋はすぐに花魁の部屋へ行って見ると、八橋は蒼(あお)い刷毛(はけ)でなでられたような顔をして、緞子(どんす)に緋縮緬(ひぢりめん)のふちを取った鏡蒲団(かがみぶとん)の上に枕を抱いていた。

  八橋は明けて十九になろうという若い遊女で、しもぶくれのまる顔で、眼の少し細いのと歯並みの余りよくないのとを疵にして、まず仲の町張りとしてひけを取りそうもない上品な花魁であった。彼女は持病の癪にひどく苦しんだと見えて、けさ結ったばかりの立兵庫(たてひょうご)がむしられたようにむごたらしく掻き散らされて、その上に水色縮緬(ちりめん)の病い鉢巻をだらりと垂れていた。自分の源氏名(げんじな)の八橋にちなんだのであろう、金糸で杜若(かきつばた)を縫いつめた紫繻子のふち取りの紅い胴抜きを着て、紫の緞子に緋縮緬の裏を付けた細紐(しごき)を胸高に結んでいた。

  「花魁。心持ちはもうようおすかえ」と、浮橋は摺り寄って彼女の蒼ざめた顔を覗くと、八橋はただひと言いった。

  「浮橋さん。くやしゅうおざんす」

  彼女は張りつめた胸をせつなそうに抱えて、蒲団の上に又うつ伏してしまった。苦しいのは判っているが、くやしいのは判らなかった。浮橋は黙って暫くその顔を見つめていると、掛橋が薬を煎(せん)じて持って来た。そうして、浮橋の袖をそっと曳いて廊下へ連れ出した。

  「悪いことができいしてね。困ったものでおぜえすよ」と、掛橋は顔をしかめた。

  十月頃からかの栄之丞がちっとも顔を見せない。手紙をやっても返事がない。呼びにやっても来ない。それで八橋はじれ切っている矢先へ、あいにくにまた悪いことが耳にはいった。店の若い者の伊之助がさっき馬道(うまみち)まで使いに出て、そのついでに観音さまへ参詣にゆくと、仲見世で栄之丞にぱったり出逢った。むこうは笠を傾けて挨拶もせずに行き過ぎたが、たしかにその人らしかったと家(うち)へ帰ってから何心(なにごころ)なくしゃべっていたのを、禿(かむろ)の八千代が立ち聞きして、それを八橋に訴えた。八橋は赫(かっ)となった。病気で外へも出られないという者が、この寒い風に吹かれて仲見世あたりをうろついている筈がない。病気は嘘に相違ない。そんな嘘をついてまでも、ここへ足踏みをしないからは、もうわたしを見限ったものに相違ない。わたしは捨てられたに相違ない、欺(だま)されたに相違ないと、廓育ちの彼女は何でも一途(いちず)に「相違ない」ことに決めてしまって、身もだえしてくやしがった。こうした機会を待ち設けていたように持病の癪の虫が頭をもたげた。さなきだに狂いかかっている彼女は、突然におそって来た差込(さしこ)みの苦痛に狂って倒れた。それは浮橋がここを出ると間もない出来事であった。

  そんな騒ぎで、八橋は仲の町へも立花屋へも、とても出て行かれる訳ではなかった。

  「立花屋のお客は誰でおぜえすえ」と、掛橋はまた訊いた。それは佐野の大尽であることを浮橋は話した。そうして、次郎左衛門も雷門まえで栄之丞に逢ったという話を自分もいま聴いて、不思議に思っていたところだと言った。栄之丞が病人でないことはいよいよ確かめられた。

  栄之丞がなぜそんな嘘をつくのか、二人にも判らなかった。なんにしても花魁の怒るのは無理もないと思った。くやしがって癪をおこすはずだと思った。しかし、そんなことを評議している場合でない。次郎左衛門は茶屋に待っている。いつまでも沙汰なしにしておいて、機嫌を損じては悪いと思ったので、浮橋と掛橋は取りあえず仲の町へ行った。出がけに掛橋は禿を叱った。

  「お前がよけいな告げ口をしなんすから、こんなことにもなるのでおざんす。これからはちっと口を慎みなんし」

  わたし達がいないあいだは、花魁の枕もとへ行っておとなしく坐っていろ、何か変った事があったら直ぐに遣手(やりて)衆を呼べ。いうことを肯(き)かないと、約束の蜜柑(みかん)も買ってやらない、羽根も買ってやらないと、掛橋はきびしくおどしつけて出て行った。出ると、店口で立花屋の女中に逢った。彼女は待ちかねて二度の迎いに来たのであった。

  二人は女中と一緒に立花屋へ行って、花魁が急病の話をすると、女房もおどろいた。そこで相談の上で、八橋の病気がもう少し納まるまで浮橋だけが茶屋に残っていて、いい頃を見て掛橋自身が迎いに来るか、禿を使いによこすか、それまでもう少し待っていて貰いたいということになった。女房も承知した。掛橋も二階へ顔をちょっと出して、気の毒そうにその訳をことわって行った。次郎左衛門は掛橋にも十五両やった。

  掛橋が二階を降りると、やがてそのあとから便所へ起つ振りをして、治六も降りた。彼はすぐに茶屋を駈け出して、江戸町(ちょう)の角で掛橋に追いついた。

  「八橋花魁、よっぽど悪いのかね。もしよくねえようだったら、無理に我慢して迎いをよこすことはいらねえ。きょうは引っ返してもいいんだから」

  「馬鹿らしい」と、掛橋は笑った。たとい花魁の病気が納まらないとしても、茶屋からすぐに帰る法はない。こっちでも帰されるものでない。ともかくも一旦兵庫屋へ来て、花魁の様子を見届けて、ほかの座敷であっさりと飲んで、それから帰るとも名代(みょうだい)を買うとも勝手にするがいい。花魁の容態の善悪にかかわらず、もう一度必ず迎いに来るから、それまでおとなしく待っていてくれと言った。そうして、彼女は「おお、寒」と、袖をかき合わせて駈けて行ってしまった。

  治六は詰まらない顔をして仲の町の曲がり角に突っ立っていた。八橋の病気というのを幸いに、彼は日のあるうちに主人を連れて帰ろうと思ったのであるが、そんな浅薄(あさはか)なくわだては「馬鹿らしい」の一言に破壊された。

  自分の相方の浮橋は茶屋の二階に来ているのであるが、彼はそんなことに係り合いのないようにぼんやりと考えていた。

  主人は八橋にもう二百両やった。新造二人に十五両ずつやった。まだやらないが、茶屋の女房にも女中にもきっとやるに相違ない。まずあしたの朝日を拝むまでに、あわせて三百両は朝の霜のように消えてしまうものと思わなければならない。千両の三分の一はもうなくなる――こう思うと、治六は肉をそがれるように情けなかった。それでも、あしたの朝すぐに帰ればいい、もしまた未練らしくぐずぐずしていたら、きょう持って来た五百両はみんな飛んでしまう。おとなしくここまでは付いて来たものの、彼はもう主人の胸倉を掴んで引き摺って帰りたいようにもいらいら[#「いらいら」に傍点]して来た。

  背中合せの松飾りはまだ見えなかったが、家々の籬(まがき)のうちには炉を切って、新造や禿(かむろ)が庭釜の火を焚(た)いていた。その焚火の煙りが夕暮れの寒い色を誘い出すように、籬を洩れて薄白く流れているのも、あわただしいようで暢(のび)やかな廓の師走らしい心持ちを見せていた。治六は煙りのゆくえを見るともなしに眺めていた。寒い風が彼の小鬢(こびん)を吹いた。

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