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日语阅读:籠釣瓶6

2006-07-11 19:31   来源:岡本綺堂       我要纠错 | 打印 | 收藏 | | |

  六

  次郎左衛門はその明くる日も、またその明くる日も流連(いつづけ)をして帰った。馬喰町の佐野屋の閾(しきい)をまたいだのは、師走の二十四日の四つ頃(午前十時)で、彼は近所の銭湯へ行って、帰るとすぐに夕方まで高いびきで寝てしまった。

  「治六さん。相変らず長逗留だったね」と、佐野屋の亭主が顔をしかめてささやいた。

  「どうも仕方がねえ」と、治六もあきらめたように溜め息をついていた。しかしただ諦めてはいられないので、彼は亭主になんとかいい工夫はあるまいかと更に相談した。

  「いっそ、その花魁を請け出したらどうだろう」

  亭主はしまいにそんなことを言い出した。こういう風にだらしなく金をつかっていたら、千両が二千両でも堪まったものではない。いっそ千両の金をたんと減らさないうちに八橋を請け出してしまって、残った金でどんな小商いでもはじめる。その方が却って無事かも知れないと彼は言った。

  治六も考えた。さきおとといからの流連でも、自分が恐れていたほどに金は懸からなかった。ここの亭主に預けてある五百両のほかに、まだ百六七十両は確かに残っている。もし四、五百両ぐらいで、そっと八橋の身請(みう)けができるものならば、いっそそうした方が無事かも知れないと考えた。

  「花魁の身請けは幾らぐらいかかるだろうね」と、彼は試みに亭主に訊いた。

  亭主も首をひねった。幾らの金があればこの問題が解決するのか、彼にも確かな見当は付かなかった。百両で身請けのできるのもあれば、千両かかるのもある。しかし、吉原で大兵庫屋の花魁を請け出すという以上は、何かの雑用(ぞうよう)を見積もって、まず千両仕事であるらしく思われた。その話を聴いて、治六も同じく首をかしげた。

  「千両かかっちゃあ大変だ。どうにもならねえ」

  もともと千両しかない金のうちが、もう三分の一ほどは食い込んでいる。千両の身請けはとてもできない。たとい残りの三分の二で、どうやらこうやら埒が明いたところで、主人と花魁と自分との三人が一文なしではどうにもならない。して見ると、八橋の身請けなど初めからできない相談であった。

  「だが、一概にはいえない。花魁の借金が案外すくないようならば、親許(おやもと)身請けとでもいうことにして、なるべく眼立たないようにすれば、千両の半分でも話が付かないとも限らないが……。いったい花魁の借金はどの位あるんだろう」と、亭主はまた言った。

  それは治六も知らなかった。しかし旦那は大抵知っているに相違ない。一応はそれとなく次郎左衛門に訊いて見て、とても出来そうもないことならば、その儘に聞き流してしまうもよし、又どうにか手出しのできそうな話であったら、改めて自分の考えも言い、旦那の料簡も訊いて見ようと、彼は亭主と相談して別れた。

  日が暮れて、夜食の膳が運び出される頃になって、次郎左衛門はようよう眼を醒ました。彼は治六に、もうなんどきだと訊いた。すぐに駕籠を呼べとでも言いそうな気色(けしき)なので、治六は先(せん)を越して八橋の身代(みのしろ)を訊くと、次郎左衛門は知らないと言った。いずれにしても今の身の上では八橋を請け出すことはむずかしかろうと言った。請け出したところで連れて来る所もないと言った。

  「いっそ早くに請け出した方がよかったかも知れない」

  次郎左衛門は今さら悔(くや)むように言った。この春よし原でつかった金だけでも、八橋の身請けは立派にできたのである。しかし自分は八橋の意見に従って、もとの堅気の百姓になろうと思っていた。堅気の百姓の家へ吉原の遊女を引き入れる訳にはゆかない。第一に親類の苦情が面倒である。それらの事情に妨げられて、今まで身請けを延引(えんいん)していたのであったが、こうなると知ったらば半年まえに思い切って身請けをしてしまった方が優(ま)しであった。それを悔んでももう遅い。自分はこの金のある限り、八橋に逢いつづけて、いよいよ金のなくなったあかつきに、なんとか料簡を決めるよりほかはないと言った。

  その暁にどういう料簡を付けるのか、治六はそれを心もとなく思った。勿論、根掘り葉掘り詮議したところで、どうで要領を得るような返事を受取ることのできないのは万々(ばんばん)承知しているので、彼もそのままに口をつぐんでしまった。あかりがついて、夜の町に師走の人の往き来が繁くなると、次郎左衛門は果たして駕籠を呼べと言い出した。しょせん止めても止まらないと思ったので、治六も一緒に供をして行った。

  その晩、治六は自分の相方の浮橋にむかって、それとなく八橋の身代のことを探って見ると、浮橋は急にまじめになった。

  「なぜそんなことを聞きなんす。身請けの下ばなしでもありいすのかえ」

  「なに、別にそういう訳じゃあねえ」と、治六はいい加減に胡麻化してしまったつもりでいた。

  しかし相手の方では胡麻化されていなかった。くるわに馴れている彼女は、これを治六の一料簡ではないと見た。主人の次郎左衛門と内々相談の上で、それとなくさぐりを入れるに相違ないと鑑定した。彼女は直ぐにそれを花魁に耳打ちすると、八橋はしばらく考えていた。

  「あとでその御家来さんに逢わせておくんなんし」

  引け過ぎになって、次郎左衛門を寝かしつけてから、八橋は治六の名代部屋(みょうだいべや)へそっと忍んで来た。浮橋をそばにおいて、彼女は身請けの話を言い出した。彼女も浮橋の考えた通りに、それはお前の一存ではあるまい、主人に言い付けられてよそながら捜るのであろうと言った。治六は決してそんな訳ではない、ただ一時の気まぐれに訊いて見ただけのことだとまじめに言い訳をしたが、二人の女はなかなか承知しなかった。なんでも正直に白状しろと責めた。

  「口は禍いの門(かど)で、飛んでもねえことになったが、まったくなんでもねえことでがすよ」と、治六も困り切っておろおろ声になった。

  「嘘をつきなんし」

  「隠すと、抓(つね)りんすによ」

  八橋は睨んだ。浮橋は小突(こづ)いた。そうして、お前が言わなければ言わないでもいい、わたしが直かに主人に訊いてみると八橋は言った。そんなことを主人の耳に入れられては困ると、治六はあわててさえぎった。困るならば素直に言えと、二人は嵩(かさ)にかかって責めた。

  防ぎ切れなくなって、治六もとうとう白状した。主人がいつまでも廓がよいをして、こういう風に無駄な金をつかっていては際限がない。廉(やす)い金でできることならば、いっそここで花魁を請け出してしまった方がいいと思ったので、ほんの自分の一料簡で訊いて見たまでのことである。主人はまったく知らないことであると、何もかも打ち明けて話した。それを聴いて、八橋は又かんがえていた。そうして、幾らぐらいまでの金を出してくれることが出来るのだと訊いた。

  「まず、三、四百両、その上はむずかしい」と、治六は正直に答えた。

  二人の女は顔を見合せた。とても問題にならないとでもいうふうに、八橋はただ笑って起って行ってしまった。

  「久し振りの土産にさえ二百両もくれなんした佐野の大尽が、おいらんの身請けを四百両や五百両で……。ほほ、馬鹿らしい」と、浮橋もあざけるように笑った。

  この廓へ足踏みをしてから、彼は幾たびかこの「馬鹿らしい」を浴びせられているので、治六は別に恥かしくも腹立たしくも感じなかったが、今の二人の顔色や口ぶりによると、身請けなどという相談はとても今の懐ろでは出来ないものと諦めるよりほかはなかった。

  そうすると、主人は相変らず現在の放蕩を続けてゆく。金はみすみす減ってゆく。それから先きはどうなるだろうと思うと、彼は実に気が気でなかった。こうして暖かい蒲団の上に坐っていても、彼の胸には冬の夜の寒さが沁み渡るようにも思われた。しかもその「馬鹿らしい」ことを言った祟(たた)りで、彼は浮橋にさんざん振り付けられた。

  けさも流連(いつづけ)かとひやひやしていると、次郎左衛門は思い切りよく朝の霜を踏んで帰った。途中はなんにも言わなかったが、馬喰町へ帰ると彼は怖い顔をして治六に宣告した。

  「貴様には暇をくれる。どこへでも勝手に行け」

  ゆうべの祟りの余りに劇(はげ)しいのに治六も驚かされた。なぜ暇をくれると言うのか、それに就いて次郎左衛門はなんにも説明を与えなかったが、かの身請けの一条を八橋が訴えたものに相違ない。主人に恥をかかした――それが勘当の根となったことは、治六にもたやすく想像されたので、彼はいろいろに言い訳をしてあやまった。八橋の身請けのことを口走ったのも決して悪気ではない、つまりは旦那さまのおためを思うがためであったと、彼は泣いて言い訳をした。

  「今更ぐずぐず言うな。出て行け」

  次郎左衛門はどうしても取り合わなかった。それでも十両の金をくれて、すぐにここを出て行けと言った。治六も途方に暮れて、帳場へ行って亭主に泣きついた。亭主もおどろいて二階へ行って共どもに口を添えて取りなしたが、次郎左衛門はやはり肯(き)かなかった。

  いったん言い出したらあとへは戻らない主人の気質(きしつ)を呑み込んでいるので、治六もあきらめて階下(した)へ降りた。

  「ご亭主さん。いろいろ有難うごぜえました。これもわしの不運で仕方がごぜえませんよ」

  「だが、旦那の料簡が判らない。お前さんのことだから、どれほどの悪いことをした訳でもあるまいに、長年(ちょうねん)の奉公人をむやみに勘当するというのは……」と、亭主は次郎左衛門の無情を罵るように言った。

  「いや、これもわしが至らねえからでごぜえますよ」

  治六はゆうべの吉原の一条を話した。それを聴いて亭主はいよいよ気の毒になった。八橋の身請けのことも元来自分が知恵をつけたのである。それがもとで治六が勘当されるようなことになっては、いよいよ黙って見ている訳には行かなくなった。しかし今が今といってはどうにもならないのを知っているので、いずれそのうちにいい折りを見てもう一度詫びを入れてやろう。これが一季半季の渡り奉公というではなし、児飼いから馴染みの深い奉公人である。一旦は腹立ちまぎれに何と言おうとも時が過ぎれば機嫌が直るに相違ない。まずそれまでおとなしく待っている方がよかろうと、亭主は親切に治六をなだめた。

  「ここの家(うち)に置くのは訳もないが、主人から勘当されたお前さんをそのまま泊めて置くというのは、旦那に楯を突くようでどうも穏やかでない。ともかくも近所の宿屋へ引き取って、二、三日待っていてもらいたい」

  それも一応は尤(もっと)もにきこえるので、治六は素直に承知して佐野屋を引き払うことにした。出る時にもう一度二階へ行って、しきい越しにしおしお[#「しおしお」に傍点]と手をついた。

  「旦那さま。長々お世話になりました」

  次郎左衛門は返事もしなかった。

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